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アイザック・ニュートンは宇宙を見たのか??

「君たちは宇宙を見なさい!!」
 教壇に立つやいなや、こう言って授業を始める先生がいました。

 いきなり宇宙とか言い出されると、一体何のことだろうと思われるかもしれません。
宗教?精神世界?いや、これは、予備校時代、物理の授業でのはなしです。
 
いきなり突拍子も無いと感じるかもしれません、でもこれは、物理の、こと、高校課程の力学、つまり、古典力学を学ぶにおいて、宇宙を見るということは何一つの曖昧さもなく、まやかしでもなく、宗教でも精神世界でもなく、限りなく原理的で、プリミティブで最初にしなければならない一番大事な正鵠を得た言葉だと言っても過言ではないのです。

 古典力学を学んだことのある人なら、この言葉が何を意味するのか、きっとすぐに分かるでしょう。
 

 ところで、古典力学の礎といえばアイザック・ニュートンですね。
ニュートンはりんごが落ちるのを見て、重力を発見した人だと認識している人も多いかもしれません。
でもそれが本当なのかどうか、真偽の程は定かではなく、ただ、ニュートンの家からりんごの木が見えたという事実から、作られた挿話なのかもしれないそうです。

しかし、ニュートンが万有引力を発見したことは事実です。
私は子供心に地球が丸いことが分かって、地球の反対側の人が落ちない事実から、きっと地球に物を引っ張る力があることが予想できて、万有引力の発見は結構簡単なことなんじゃないかと思っていた時期があります。
でも、ニュートンが偉大だったのはただ発見しただけじゃなくて、それを数学的に、非常に美しく記述し、古典力学を完成させたことにあります。

その課程で、高校の数学でも最後に出てくる、微分積分を確立させ、運動方程式の記述に使い、2項定理を発見しました。
この世紀の研究を殆ど25歳までに成し遂げ、その後は錬金術に熱を上げていたそうです。

 時代背景からすると、ニコラウス・コペルニクスに始まる地動説が、当時の教会とすったもんだを起こして、ヨハネス・ケプラーによって、ようやく正しいとされるようになってから、ケプラーの死後、12年ほどして、生まれています。
ニュートンの時代とは、ようやく時代が地動説を受け入れ始めた頃のことのようです。

 ニュートンはその後、44歳で、「プリンキピア『自然哲学の数学的諸原理』」という古典力学の原点のような有名な論文を書いています。

 しかし、私はふと思いました。ニュートンは宇宙を見たのだろうか??

 ニュートンは万有引力、つまり、地上では重力に当たる力を発見しました。でも、古典力学では宇宙を見ることが大事だったのです。

 宇宙を見る。これは何を意味するのでしょう。

 古典物理学において、物体の運動を記述するに当たり、一番シンプルで、全ての元になり、考えやすい世界はどういう世界なのか。
そう、それは何一つ力のかかっていない、空気抵抗も無い、ある速度で動くものはその運動を永遠に続け、静止しているものは永遠に静止する世界。
物理の言葉で言い換えると、これを慣性系と呼ぶのですが、この慣性系での物体の運動を考えるのが必要不可欠なことでした。
系というのは簡単に世界と考えていいでしょう。慣性を説明するとちょっと厄介なのですが、余計な力の掛からないと考えておくことにします。

この、慣性系に最も近く、しかも一番身近な世界。それが宇宙だったのです。


「君たちは宇宙を見なさい。」


 この次に

「ここに一つの質量を持った物体がある。」

 こう続くわけです。




 古典物理を記述しようと思えば慣性系を考えないわけにはいきません。
運動方程式に慣性系は必要不可欠なものだったのです。

しかし、この慣性系は重力という余計な力のかかる地球上ではなかなか実現するものではありません。

 ニュートンは重力を発見することにより、きっと重力の無い世界を発見したんじゃないかと思い当たりました。

 ガリレオ・ガリレイが1609年、ようやく望遠鏡で宇宙を見始めて、ニュートンが生まれたのが、1642年でした。
ニュートンは望遠鏡をのぞくことなく、まちがいなく、宇宙を見ていたのです。

ふと、走ってるときにこう考えました。
by fuji_akiyuki | 2012-01-24 12:43 | チリ・アルゼンチン
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