チベットはこんなところ。@アリ(中国:チベット自治区)

ここまで、走ってきました。これがどんなだったか感想を書きます。
くれぐれもバスで来てしまった方は見ないようにしてください。


ペダルを踏むと息が上がる。
登り道はやたらと勾配がゆるくても100m走ることすらやっとになる。

標高4800m、アクサイチン。中国とインド、双方が領土を主張する微妙な土地だが、インドが気づかない間に中国が道を通してしまい、事実上中国が実効支配しているというちょっと冗談みたいな土地。

しかし、中国がそこに通した道はほとんど4800mを越えるとんでもない道。空気も薄く、自然環境も厳しい。そんなところを自転車で走ってみた。

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空は青を通り越して群青色、空気は冷たく澄んで、肌を刺すように刺激してくる。
高度のためか、太陽に近く、日差しは痛いほど体に降り注ぐ。
日差しにまとも当たっているともちろん熱いが、4800mの冷たい空気はそよ風となって吹いただけで、体をクールダウンさせてくれる。
肌は日差しに焼かれ、さわやかで清涼感あふれる風に冷やされる。

爽快である。


べダルをこいでも汗が出ない。ここは乾燥した荒野でもある。正確には汗はかいたと同時に風に吹かれ蒸発してしまう。

どんなに走っても体には爽快感。

4800の荒野に地平線が見える。この信じられないほどの高度に信じられないほどの平原が広がっているのだ。
そして地平線まで続く道。あるのは風と、太陽だけ。
止まって耳を澄ませば風の音しかしない。
風がやめば何一つ音を立てる野のない完全な静寂が訪れる。

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台地は不毛な茶色をしていることもあれば、低く生えた草によって淡く緑や、黄緑色に色づくこともある。

道は時に荒野に走る一本道、にもなるが、地平線の向こうから山が近づいてきて、突如、山道になることもある。

高度は5000mをいったり着たり、もちろん木は一本も生えていない。すでに森林限界はとっくに超えている。

周りを取り囲む山はすべて不毛の禿山になる。しかし、その禿山の美しさに圧倒される。
何億年という単位で、風と、雨と、日差しと、温度によって、浸食された不毛の山々は硬い層頂に残して広く裾野にその崩れた地理や砂や小さな小石を緩やかに広げている。
素直に延びるその曲線の美しさに感嘆させられる。よく観察すると、その筋はいくつもの色と深みと光沢を持っている。

不毛とはいえ、山全体はその裾野も合わせて、千差万別の色と形、そして、時にダイナミックな裂け目を見せたりと見てるほうをあきさせない。月並みで、陳腐な言葉で語るのならば、自然は偉大な芸術家であるとしかいえないが、それは筆舌に尽くしがたい。
しかし私はそこで、何億年もかけて自然が作り出した造形美に取り囲まれ、時に五感を刺激されて、体全体で体感している。

ペダルの重さに大地のうねりを感じ、肌で、太陽の熱と、澄み切った空気の冷たさを感じ、肺と足の披露の速さにその高度を感じる。ハンドル握る腕で自転車の振動を感じる。

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目に入るものは群青の空、不毛の山の頂を隠す純白の雪、空を漂うやっぱり純白の雲、そして見分けようと思えば1000をも越す大地の色、山の色。そして目の前に続く道。

しかし、劇的な視覚への刺激は湖の存在。

峠を越えたとき、もしくは山を回りこんだとき、突然現れる湖の美しさにはいつもハッとさせられる。

正確な地図は持っていない、どこに湖が潜んでいるかわからないから、その存在に突然ぶち当たったときに本当に息を呑むような驚きと、その鮮やかなターコイズブルーだったり、エメラルドグリーンの豊かにたたえられた水に涙が出てくるような感動を覚える。時に湖は空を切り取ったような群青色であったりもする。

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Photo: Beat Heim


湖ははじめ目の前に現れたときから、見る間に、これは自分が動いているからに他ならないのだろうが、その色を変え、たたずまいを変え、透明度を変えていく。

はじめは目の覚めるようなターコイズブルーだった湖は太陽の光を反射してだんだんと銀色に輝きだし、次第に対岸にそびえる山とその頂の雪をその水面に映し出す。そして湖のほとりまで来るとほんのりと淡く緑に色づいた水は澄んで、底をはっきりとのぞくことができる。

走れば走るほどに千差万別の景色が通り過ぎていく。景色を見ているのではない、体感しているのである。

肌で温度を感じて、風を感じて、光を感じて、熱を感じて、空気を感じて、
目で、青を見て、黒を見て、白を見て、碧を見て、藍を見て、茶を見て、赤を見て、黄を見て、
耳で、 風を聞いて、砂の飛ぶ音を聞いて、虫の鳴き声を聞いて、沢のせせらぎを聞いて、
鼻で・・・感じるにおいって。何だっただろうか。しかし、入ってくる空気の爽快さは感じ取れた。
舌で、さすがに味わうものはなかったけど。

とにかく、17日間。朝から晩まで、チベットを、いや、どこでもいい、名前なんて、5000mを挟む高所を体全体で体感し、その雄大さと、爽快さと、寒さと、暑さと、つらさと、快楽を堪能した。

時にわけもわからず涙が出てきた。
世界にこんなところがまだあるのかと・・・・思ったからだろうか。
自然の雄大さにゆれて自分がちっぽけだと・・・・心細くなったのか。
これを体験するためにここに来たんだと・・・・満足したからだろうか。
これこそが自転車の醍醐味だと・・・・喜びをかみしめたからだろうか。


・・・・わからない。
千差万別の体の外の世界に体の中の感情も静寂ではいられなかった。
いや、外側はどこまでも静寂の世界なのだが。

とにかく、私は見たのではない。体全体で感じたのである。

とまあ、1000kmこんな感じでした。
とはいえ、こんなにすばらしい思いばかりではなく、雪に降られたり、大風に吹かれたりもしました。
感想と紫外線のせいか、唇が荒れ果て、口内炎ができたり、目がしょぼしょぼしたり、視界がぼやけたり。
道が悪く振動のせいで、ハンドルを握る手が荒れ果てて皮がむけてぼろぼろになったり、15日くらいシャワーを浴びることができずに髪の毛というものは洗わないでいるとドラゴンボールのサイヤ人みたいになることを知りました。

いまだに口内炎と唇のあれには苦しんでいて、先日、初めて自分でリップクリームなるものを購入してしまいました。
サングラスは持っていたけど、サングラスであの景色にフィルターをかけてしまうのがもったいなくて結局使わずじまいでした。

あんまり長くないけど、かなり考えてかいたので疲れました。
本当はちょっとチャリダーらしく自転車から出る音によって、自転車の状態を知ったり、テントを立てたときのハプニングなんかについても書こうかなって思ったけど、疲れたので今日は寝ます。
また次回。
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by fuji_akiyuki | 2007-07-31 01:48 | チベット
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