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"生きている石?"@リビングストーン(ザンビア)

その人は手が不自由なようでした。中途半端に曲がって開かない指で一生懸命箱を包
装紙で包んでくれて
「取り扱いには十分に気をつけてくださいね,ナイフは危ないものですから。」
と注意とも警告ともとれるようなことを行って私にナイフを売ってくれました。50を過ぎたように見える女性だったと記憶しています。どちらの手が不自由だったかもう忘れてしまったのですが,確か右手だったと思います。
 
 その店は私が高校生の頃から銀座通りの端にあり,ちょっと刃物やライターなんて物に興味を持ち出した私には魅力的なお店だったのですが,パルコやら若者の集まるデパートライクなショッピングセンターにテナントを借りて安物のアクセサリーなんかをジャラジャラ付けた若い店員がやはりそのアクセサリーやらと一緒にウェンガーやヴィクトリノックスやらジッポを売っているような店とは違い、本格的な刃物の店であったその店はちょっと敷居が高いような気がしてなかなか足を踏み入れることができなかった店でした。
 銀座通りといっても東京の銀座ではなく、地方都市ならどこにでもあるまったく銀座でもなんでもない名前だけが銀座通りになっているようなとおりでした。私の場合は千葉の銀座通りだったのですが。
 
 その店に行こうと思ったのはこの旅行で一つナイフを新しく買おうと思ったからです。前にも使っていたナイフですが,前のナイフはブラジルで奇妙な固い木の実を割ろうとして刃をかけさせてしまったのですが,形,長さ,そして何より切れ味が良く,とても気に入っていました。そこで同じ型のナイフを買おうと方々探し回ったのですが,見つかりませんでした。それもそのはずでそのナイフはウェンガーというメーカーのナイフで,キャンプ用品屋によくあるのはヴィクトリノックス。さらに自分自身もそのナイフがヴィクトリノックス製だとばかり思い込んで探していたので見つかり様がありません。そして思いつくキャンプ用品屋やらアクセサリー屋をあたっているうちにあそこならあるかもしれないと思いついたのです。

 そのナイフはヴィクトリノックスやウェンガーのほかのナイフと違い缶切りやら栓抜きやら鋏といったごちゃごちゃしたものは一切ついてないシンプルにナイフだけでさらにその手のナイフの中では多分一番刃渡りが長くそしてなんと言っても形がよくて,そのナイフを探してちょっと敷居の高いその刃物専門店に入ったのです。

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 店内にはナイフに限らず包丁、はさみ,から爪きりにいたるまで刃がついているものはすべて取り扱っていました。ナイフや包丁はそれこそ名前の彫られたいかにも高そうなものまでそろえてあったので私は店内をくまなく見て回ってきょろきょろしていたので,大変怪しかったのでしょう。その女性はちょっと私を訝しがってみていたのでした。

 あまり店内をうろちょろするのもよくないかなと思って店の中央のガラスケースの中にヴィクトリノックスとウェンガーのコーナーを見つけて目的のナイフを探し出したのです。
 
  私が高校生の頃,確かナイフを喧嘩や恐喝に使う事件が後を絶たず,特にバタフライというタイプのナイフが店頭から徐々に消えていったようなご時世でした。そんなこともあって、なんとなくナイフを買うことやその刃物専門の店に入ることがちょっとはばかられるような、何か後ろめたいところがあったのです。もちろん私はナイフを喧嘩に使うつもりなどないのですが。
 そんなこんなで店のほうも若い男にナイフなどを売ることをちょっと警戒していた嫌いもあったようです。彼女がそんなことを思ったのかは分かりませんが、やはり私が、ナイフを買おうとしていることに、何に使うのかは気になったのでしょう。

 しかし私が,そのウェンガーのナイフを差し出して「これをください」というと、彼女はそれに合う箱を探し出してくれてナイフを箱にしまい,不自由な手で包装紙を巻きつけているときに一言だけ,「取り扱いには十分に気をつけてくださいね,ナイフは危ないものですから。」と言ったのです。言葉どおりに受け止めるべきなのか,この言葉には裏があって,喧嘩や人を傷つけるためには使ってはいけないと言う含みがあったのか,私には後者のような響きがあったように感じたのです。

 実はそのお気に入りのナイフが昨日行方不明になったのです。多分私がどこかに置き忘れて、買い物に行ってしまったのだと思って、買い物から帰って心当たりを探したのですが,一向に見つかりません。きっと誰かが見つけてこれはラッキーと持っていってしまったのではないかと思ったので,宿のバーやダイニングでくつろいでいる人に
「ナイフを無くしてしまったのだが誰か見ませんでしたか?」
と片っ端から聞いていく作戦に出ることにしました。出来心で持っていってしまった人も探している人の存在を知れば帰ってくるかもしれないと思ったからです。
 値段よりもそのナイフに,特に買ったときのその女性の言葉になぜか愛着のようなものを感じて、とても大事に使っていたので,どうしても探し出したい気持ちだったのです。
 しかし,この行動が別の方向に動いてしまったようで,私が,広く宿にいる人たちにナイフがなくなって探している事をふれまわったので,それを聞きつけたあるツーリストのカップルが私に
「君はナイフを取られたの?私は180ユーロもするサングラスを取られたのよ。」
と言ってきたのです。
 もう今日はレセプションも閉ってしまっているし,日曜で警察もやっていないから明日一緒にレセプションに言って警察に行こうと言う事になったのです。

 何か他にもなくなったものがあったらしく,男のほうはかなり興奮気味で2日間で4つも物がなくなるなんておかしい、きっと使用人が盗っていったんだ。と言っていました。
 盗られたのは女の子のサングラスらしく,その他にも靴を取られた人もいるとかで,その夜のうちにどこかから宿のマネージャーを見つけてきて男は興奮しながらマネージャーに使用人の管理が行き届いてないんじゃないかと詰め寄りました。マネージャーのほうはこんなことは今までおきたことがない。きっと何かの間違いだ。と言いながらも明日警察に言って盗難届を作成してもらおう。無くなったものはきっと返ってこないだろうというような趣旨のこと言っていたようでした。
 何件も続いていると聞けば私のナイフもきっと盗られたのだろうと思ってしまうところがおろかなところで,結局私も翌日(これは今日のことですが,)警察に行って盗難届を作成することになったのです。 
 今朝,9時にマネージャーの車に乗り,警察へ行き,事情を話して、何が盗まれたのか,どこで,いつ,そんなことを質問されて,宿に帰ってきました。

 私はもう保険も切れているので盗難届など何の意味もないのですが,まあとにかく作っておくに越し事もないだろうと警察に同行したのですが、やはり,ナイフを無くしたことがショックでした。何か不自由な手で一生懸命ナイフを包んで私に警告を発してくれた彼女になんとなく申し訳ないような気持ちで一杯でした。彼女の大切なナイフを譲りうけたのに私はちょっとした気の緩みからどこかに置き忘れて,それを誰かにもっていかれてしまった。仮にもしそれが町のマーケットで売りに出されて,悪い人間の手に渡り,もし犯罪にでも使われるようなことがありならば,もしあのナイフが人を傷つけるために使われでもしたのなら,
 そう思うと本当に申し訳なくて申し訳なくて,私は今日の午前中ずうっと沈んでいたのです。


 ところがそのナイフが警察から帰ってきてしばらくすると見つかったのです。宿の中にあるギフトショップとインターネットコーナーが一つになった場所があるのですが,そこのコンピューターの脇に置き忘れていたようです。確かに昨日,買い物に行く前に、その中に入ってインターネットがいくらでできるのか,と聞いた覚えがあります。そのとき確かにナイフを持っていたような気もします。インターネットコーナーは宿のセイフティーボックスのすぐ後ろで,セイフティーボックスはおのおの使う人が南京錠などを使ってかぎをかけておくようになっています。そして、私のそのナイフにはセイフティーボックスに使っている南京錠のかぎが取り付けてあったのです。

 つまり私は買い物に行く前,セイフティーボックスにどうでもいい文庫本などをしまうため(テントまで行くのが面倒だったので,)にナイフについたかぎを使ってセイフティーボックスを開け,そのナイフを持ったまますぐ後ろのインターネットコーナーで
「ここでインターネットをやるといくらかかるのか」
 とまたまたどうでもいい事を聞いて,そこにナイフを置き忘れてしまったのです。
 買い物から帰るとそのインターネットコーナーはもう閉まっていて探すことができずに,なくなったと思い込んだわけです。

 まあ、かえってきてよかったです。今度はしっかり注意し様と思います。
 
いまは世界3大瀑布の一つ,ヴィクトリアフォールズのすぐ近くの町,リビングストーンと言うところにいます。
by fuji_akiyuki | 2005-08-08 20:05 | ザンビア
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