書きたいことはいっぱいあります。
ちょっとメモを取っただけで、B5の用紙一杯になってしまったのですが、ここはパキスタン。いつ何時停電がおきるかもしれません、いつ何時、接続が切れるかも分かりません。 ということで、カラシュバレーとシャンドール峠についてだけ書きます。 チトラールに到着して、次の日。 洗濯とネット(この日に前々回の長い文章を書きました。4時間ネット屋さんにいました。)。 それで、1日休憩して、カラシュバレーへ。 カラシュバレーは20kmほど来た道を戻ってから分岐を折れてわき道に入ります。 知っていたら、チトラールに行かずに直接行っていたのですが、とある某ガイドブック旅○人の地図によればチトラールからカラシュの分岐まで、約10kmに見えます。そう思っていったのでちょっと損した気分でした。 分岐からわき道に入るとすぐにアユーンという村があって、ここから上る上る。 レソトとか、スワジランドを思い出すありえないほどの勾配。もう物理的に上れなくなる寸前。タイヤと地面の摩擦係数が足りなくて、タイヤがずるずる滑り落ちてしまうような坂です。 でもそんな坂だからこそ、ひと漕ぎひと漕ぎごとに高度を増して、眼下に見えるアユーンの町が少しずつ遠くなります。 そんなことに快感を覚えたり、あまりの坂の急さにたまには理不尽に腹を立てたりしながらようやく旅○人の地図によると(サイクルメーターをなくしているので正確な距離が分かりません)約5kmほどきたところで、ポリスのチェックポイント。 実はここで、チトラールに先に行っておいたことが功を奏します。 カラシュバレーに入るには、ここのチェックポイントで、レジストレーションというのを見せて、入場料を払わなければならないのです。入場料って、動物園ですか!?って感じもしますが。 そのレジストレーションというのが、チトラールのポリスステーションでしか手に入れることが出来ず、私はチトラールの宿に着いたとたん、宿のスタッフに訳もわからず取りに行かされていたので、このチェックポイントではスムーズに事が進んだのです。 ま、なくてもちょっと何か言われるくらいで、何とかなるそうですが。 そんなことよりショックだったのが、カラシュバレーの村まで、12kmと書かれていたことです。 旅○人の地図によると5kmもないはずなのに。 一歩一歩…いや、押してない、押してない。ひと漕ぎひと漕ぎごとに高度を上げていくと、もう嫌、もう駄目。と思ったくらいで、村が出てきます。 いくつかあるカラシュの村でもブルーンという村に行きたかった私は人に会うたびに 「ブルーンまで後何キロくらいですか?」 と訊くわけです。しかし、答えは決まって、 「あと1km」 絶対ありえない。たまに 「あと5分」 という答えもありました。が、「それは車でだろう!!」と突っ込みたい気分です。 結局後1分を60回くらい繰り返して、目的の村に到着しました。 カラシュはムスリムと違って、女性が綺麗な民族衣装に身を包み、顔出して、ちゃんと会話もしてくれます。 挨拶もしてくれるし、笑顔も覗かせてくれるので、ちょっとほっとします。 衣装は黒地にスカートの裾と襟、袖に原色系の刺繍が施させていて、袖とスカートの丈は長く、頭に貝やビーズや小さな鈴をあしらい、後ろに垂れ流すような飾りのついた派手な帽子を被っています。 男のほうはというと全然ムスリムと見分けがつきません。 そして、ここに来た最大の理由。 そう。おチャケ これが今回カラシュの最大の目的。 このためだけに20km戻ったり、これでもかという勾配の坂を上ってきたのです。 一月ぶりのお酒。うまい。本当。うまかったです。 そしてそれをフラスコ(金属製のちょっと曲がった入れ物、よく酔っ払いが持ってるウィスキーとか入ってそうなやつ)に詰めました。シャンドールでいっぱいやるために。 カラシュバレー(ブンブレッド谷)、上り詰めると最後にムスリムの村があります。この村、かなり綺麗でした。 谷の合間にちょっと開けた場所で、緑のじゅうたんの敷き詰められたように草が茂り、ところどころに木もあり、しかも水が懇々と流れていて、本当に楽園のようでした。 しかもまたその水の管理の仕方も凄い。一見無造作な水の流れも辿っていくと木をくりぬいた水路を橋にして、別の流れの上を渡っていたり、谷に降りていく道の横に作られた水路は流れを制御するためか、道を歩く人の頭より高いところに水面があったりとか、途中に水車があったり、とにかくグーニーズに出てきそうなカラクリいっぱいの水の流れが沢山あったり。 上まで歩いてよかったと満足して、カラシュバレーを後にしました。 ま、実際カラシュにいても歩けそうなところは歩いたし、後は宿でゆっくりするくらいしかやることもなくなったわけでして、それでもお酒があれば何とかなりそうですが、これも安いものでもなかったので、退屈して、カラシュを出たわけです。 チトラールも小さいくせに結構車が多くて、ひっきりなしに村のメインロードを車が行き来していて、あまり居心地が良くないので、スペアタイヤだけ買って、すぐにシャンドールに向かいました。 チトラールを出て、40kmほど行ったところでしょうか、ペシャワールでは替えたばかりの後輪のタイヤが駄目になりました。 やっぱりインド製は駄目です。最悪です。タイヤが磨り減る前に横が切れて使い物にならなくなります。ちょっと専門的に言うとリムとあたる部分が弱すぎます。 そして、たった一本しかなかったスペアをいきなりここで使うことになって、かなり心細くなってしまいました。 自転車のトラブルで言うなら、もう少し深刻なトラブルが起き始めていました。 チェーンが伸びて、ギアの歯とうまくかみ合わなくなってきていました。大きなギアから使えなくなっていきます。 このときすでに後ろの一番大きな歯(一番軽い)は使えなくなっていました。 1日目はブニという村。ここまで舗装。 で、ここからが凄かったです。2日目からずっとダートになるのですが、ある村ある村が全部風の谷。ナウシカに出てきそうなむらばっかりです。 荒涼とした山肌に突如谷が広く割れて、緑の宝石のような村が、点在します。所々にポプラが植わっていて、村に入ると綿毛が飛んできます。何か、本当に夢の中にいるようでした。 ただ…子供達は私を見ると 「pen,pen,pen!!」 と叫ぶのが残念でした。 一歩間違えば谷底に真っ逆さまみたいな危険な難所もあったり、急流の上にかかる危なっかしい橋を越えてみたり、谷底に流れ落ちる水の流れが道路を横切っていたり、千差万別の顔を見せる峠道を一歩一歩…いやいや、ひと漕ぎひと漕ぎ、高度を上げて上っていきます。 途中、そんな緑豊かな村で休憩したり、木陰で休んだり、沢の水で喉を潤して、上り坂や照りつける太陽と戦いながら上っていきます。 高度を上げるにつれて、酸素は薄くなるようだけど、空気は澄んで、涼しいものになり、すがすがしさを実感できるようになります。 なんかやっぱり自転車でよかったと思います。バックパッカーの皆さんには申し訳ないですが、バスや車で越えるよりきっと100倍気持ちがいいです。 本当に、これは自転車の醍醐味だと思います。 マスツージという村で一泊して、峠を目指します。 3日目、マスツージから峠まで42km、でもこれがつらい。 30kmのところにソーラスプールという村があるので、そこで1泊することも視野に入れながら、上ります。 この日、いきなりスポークに挟まった拳大の石が前輪のマットガードをグニャグニャにしてしまいました。 何とか、走れるくらいに修復しておいて、ソーラスプールに着いたら12時30分。 残り10km。 このまま行けるだろうと、ここで昼食をとって峠まで行ってしまうことにしました。 で、昼食。おじいさんに 「いくら」 と訊くと 「40ルピー」 といわれて、注文して、食べ終わると子供が出てきて、 「70ルピー」 と言い出した。 来たよ!ここはアフリカかっつうの!! 「40ルピーって言われたんだけど。」 「70ルピー」 ちょっと怒って見せると 「50ルピー」 下げる気はないようなので、無視して払わずに出発。 さすがに子供もビビって追いかけてきて、 「40ルピー」 と言い出した。 勝った。 でも私は50ルピー札しか持ってません。そして子供はおつりを持ってません。 「40ルピーはいいよ。でもおつりの10ルピーがなきゃ払えないじゃん。」 子供は困った顔をして、 「50ルピー札くれ、お釣りは後で持ってくるから。」 もし、50ルピー札があれば近くの商店で両替をしてもらえるからそう言っているのは分っていたのですが、 「いやだ、お前に50ルピー札渡しても、お釣り持ってくるかどうか分らないじゃん。現にもうお前はうそついたし、信用できない。10ルピー札持ってこなければ払わない。」 信用がないんです。 つまり、元手の50ルピーがなければ誰もこの子供に10ルピーを貸してくれないのです。だからまず、お客からお金をもらっておかないと困るわけですが、ご近所さんなら貸してあげればいいのにと思う所です。よくアフリカでもありました。 子供は泣きそうな顔で走って帰って、10ルピー持ってきました。 そこから10kmひたすら上りです。しかも空気が薄くて、全然自転車が漕げません。 いつもなら難なく上るはずの勾配も全く上れません。すぐに息が続かなくなります。 どうも3000mを超えてくると呼吸がつらくなってくるようです。激しい運動をするとすぐに息が上がります。頭痛や吐き気は多分4500mくらいからみたいですが。 Photo: David Salamander とにかく上れない。だんだんもうどうでもいいやと思って、自転車を押して上り始めました。 10kmくらい何とかなるだろうぐらいの勢いで、押したのですが、サイクルメーターなし、時計もなし、で、かなり来ただろうと思ったところで、峠まで5kmのキロポストが…。 やばい。まだ半分。しかももう、太陽は山の陰に入りそう。シャンドール峠の高さは3720m藤さん、あ、もとい、富士山と大差ない高さ、こんなところで、日が暮れたら寒くて死んじゃうよ。と、そこからは死に物狂いで、自転車に乗ってみました。何度も息継ぎのために自転車を止めることになりましたが、最後3kmほどは平地で、シャンドール峠につくことが出来ました。 そう、シャンドール峠は上が平らになっています。むちゃくちゃ綺麗です。3700mの高地に緑のじゅうたんです。 しかも峠のレストランのそばに湖があります。 この湖の青を見たとたん泣きそうになりました。 まさに楽園です。 Photo: dlouhyjan 水は豊富で、周りを取り囲む5000m級の山々から雪解け水がその青い、青い湖に流れ込み、牛が豊富な緑を食んでいます。 空の青は群青色に近く、雲と、雪は純白、岩肌の露出した山々は赤や灰や黒の彩があります。 まさに楽園です。 シャンドール峠には2泊しました。峠は自前のテントなら無料で泊まれました。 着いたその日は、5時30分。ソーラスプールを1時半に出たとしても10kmに4時間もかかったことになります。時速2.5km何も出来ません。 次の日。雲ひとつない快晴でした。雪解けの冷たい水を飲んで、その水で、洗濯をして、湖を見に行きました。 湖にはおたまじゃくしがうようよ。何か春でした。しかもあんまり警戒心がないらしく、すぐに取れます。そこら辺に飛んでるトンボも蚊もなんかすぐに捕まえられます。タニシは仰向けに水面に浮かんでるし、ヤゴ(トンボの幼虫)逃げるということを知らないみたいでした。 何か平和な湖を見て、昼寝して。ゆっくりと空の青を見てすごした一日でした。 そして、太陽が沈むと空はだんだんと明度を落として、山の頂の雪の白だけが浮かんで見えるくらいになる頃、空の主役は太陽から星へと移り変わります。 長くはみていられなかったのですが、さそり座が東の空から上がってくるところでした。久しぶりに天の川を見ました。 こんな世界が富士山と同じような高さにあるなんて。それだけでも驚きでしたが、でも逆にやっぱり、ここまでこなければこんな清涼感あふれる空気の中で、こんなに綺麗な景色を見ながら、すがすがしい気分にはなれないのかな。 でも、本当に自転車でよかった。感動、や体感した空気は言葉では語りつくせませんが、自転車であったからこそ、100パーセント堪能できたと思いました。 まさに、楽園でした。 で、昨日ギルギットまで降りてきました。 暑い。 暑い。 暑い。 手元の温度計で、34℃ありました。 なんか物価も高いし、もう嫌です。出ます。
by fuji_akiyuki
| 2007-06-12 02:30
| パキスタン2
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